防衛省が令和9年度概算要求を決定 5年以内の防衛力強化へ掲げた3本柱に9項目

防衛省は、令和9年度概算要求を決定したと発表しました。
防衛省が決定した令和9年度概算要求の内容
令和9年度概算要求では、5年以内に防衛力を変革し、抑止力・対処力を大幅に強化することに向け、「新しい戦い方」への対応、持続的な対応能力、防衛力の基盤の3つの柱の下、9つの項目を重視しています。
詳細は防衛省HPをご覧ください。https://t.co/QfMmowOXT3 https://t.co/R5vj6uv0Rs pic.twitter.com/Qlmuae2wba
— 防衛省・自衛隊 (@ModJapan_jp) August 31, 2026
今回の概算要求では、今後5年以内に防衛力を変革し、抑止力と対処力を大幅に強化することが柱に据えられています。
防衛省は「新しい戦い方」への対応、持続的な対応能力、防衛力の基盤という3つの柱の下で、9つの項目を重視するとしています。
大きな特徴は、従来の装備や部隊運用だけでなく、AI、無人アセット、宇宙、サイバーといった分野が前面に出ている点です。
防衛省が示した資料では、「新しい戦い方」への対応として、AI、無人アセット、スタンド・オフ、統合防空ミサイル防衛、宇宙、サイバーが挙げられています。
AIは、膨大な情報を素早く処理し、判断を支える技術として期待されています。
防衛の現場では、レーダーや衛星、艦艇、航空機、部隊から得られる情報が大量に集まります。
これらを人の目だけで整理するには限界があり、AIを活用することで、状況把握や意思決定の速度を高める狙いがあります。
無人アセットも重要な項目です。
ドローンや無人機、無人艇などは、危険な場所に人を出さずに情報を集めたり、広い範囲を監視したりするために使われます。
近年の紛争では、無人機の活用が戦い方を大きく変えており、日本の防衛でも無人装備の整備は避けて通れないテーマになっています。
スタンド・オフ能力は、相手の脅威が届きにくい距離から対処するための能力です。
島しょ部を含む日本の防衛では、相手に近づかれてから対応するのではなく、より遠方で抑止し、必要な場合に対処できる態勢が重要になります。
長射程のミサイルや、それを運用するための情報収集、指揮通信、補給の仕組みも関わってきます。
統合防空ミサイル防衛は、ミサイルや航空機、無人機などへの対処を陸海空で連携して行う考え方です。
弾道ミサイル、巡航ミサイル、無人機、航空機など、空からの脅威は多様化しています。
ひとつの部隊や装備だけで守るのではなく、レーダー、戦闘機、艦艇、地対空ミサイルなどをつなぎ、全体として防空能力を高める必要があります。
宇宙とサイバーも、防衛に欠かせない領域になっています。
衛星は、通信、測位、情報収集などに使われます。
宇宙空間での安定した利用が妨げられれば、自衛隊の活動にも影響が出ます。
また、サイバー攻撃によって通信やシステムが狙われる可能性もあります。
現代の防衛では、陸・海・空だけでなく、宇宙やサイバーの備えも任務継続に直結します。
2つ目の柱として示されたのが、持続的な対応能力です。
ここでは、太平洋・シーレーン防衛が挙げられています。
日本は資源や食料、工業製品の多くを海上輸送に頼っています。
太平洋やシーレーンの安全は、日本の暮らしや経済を支える基盤です。艦艇や航空機による警戒監視、海上交通路の安全確保、離島防衛などが、この分野に関わります。
3つ目の柱は、防衛力の基盤です。
防衛生産・技術基盤と人的基盤が重視項目に入っています。
防衛装備品は、購入して終わりではありません。
開発、製造、整備、補給、修理を担う企業や技術者がいて初めて、長く使い続けることができます。
国内の防衛産業を維持し、必要な装備を安定して確保することは、防衛力そのものを支える課題です。
人的基盤も欠かせません。
どれほど新しい装備や技術を導入しても、それを扱う隊員がいなければ任務は成り立ちません。
自衛官の確保、処遇改善、教育訓練、勤務環境の整備は、防衛力を強くするうえで根本的な部分です。
人を集め、育て、長く働ける環境を作ることが、装備の近代化と同じくらい重要になります。
防衛省は、5年以内に防衛力を変革するとしています。
これは、時間をかけて少しずつ整えるというより、厳しさを増す安全保障環境に対応するため、限られた期間で防衛体制を大きく変えていくという考え方です。
令和9年度概算要求は、単なる予算の数字ではありません。
AIや無人機、宇宙、サイバーといった新しい分野への対応、太平洋とシーレーンの防衛、装備を作る産業と隊員を支える人の基盤。これらをまとめて強化しようとする方向性が示されています。
防衛力を支えるものは、戦車や艦艇、戦闘機だけではありません。
情報を集める技術、遠くで抑止する力、空や宇宙を守る仕組み、装備を作る企業、そして現場で任務にあたる隊員。令和9年度概算要求は、その全体をどう整えていくのかを示すものとなりました。
文:花園明